パクチーの王様

 荷物を動かしたと思ったら、また引っ越し、ということになっても困る。

 少し物を整理もしたいし。

 実家に置いておけば、ゆっくり見極めて、少しずつ荷物を運べるからだ。

 なんせ行動の早い人だからな。

 いきなり秘境にいい店舗を見つけたら、明日引っ越すとか言い出しかねない。

 そんなことを考えながら、芽以もなんとなく天井を見た。

 逸人の部屋ほどではないが、街の明かりが差し込み、天井は明るい。

 そこを見つめたまま、芽以は言った。

「ありがとうございます。
 今日、圭太が来たから、気を使ってくださってるんですよね?

 でも……、自分でもびっくりしてるんですが。
 思ったほどショックではなかったんですよ」

 逸人は沈黙したまま、芽以の話を聞いている。
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