パクチーの王様
「なにも用はないわ。
 このガラスでコンタクトがずれてないか、チェックしてただけよっ」
と険のある声で言ってくる。

 うわー、いろいろとめんどくさそうな女だなーと思う。

 ゴージャスな美人だが。

 チェスターコートのポケットに手を入れ、黙って女を見ていると、逃げればいいのに、逃げなかった女は沈黙に耐えかねたように言ってきた。

「……貴方、この店から今、出てきたけど。
 お店の人のお知り合い?

 私が此処に居たって言わないでね」

 うん、わかった、と言った瞬間、静は芽以が店を開けるために鍵を開けるのを見た。

 なにも考えずに、ガチャリとドアを開ける。

「あっ、おはようございますっ」
と驚いたように言う芽以に向かい、言った。

「芽以ちゃん、お客さん」

「ちょっとーっ!?」
と後ろで、女が叫んでいる。
< 293 / 555 >

この作品をシェア

pagetop