パクチーの王様
「そういえば、お前、この間も食べていたが、パクチー、食べられるようになったのか?」

 そう訊く逸人に、静は、
「いや、この間久しぶりに食べて、やっぱり、これは人間の食い物じゃないなあと再認識したところ」
と言う。

「……じゃあ、食うなよ」
と言う逸人に、

「でも此処、パクチー専門店だから」
と静は繰り返していた。

 ……人がいいのだろうか。

 素直なのだろうか。
 わからない、と思っていると、日向子が、そこでようやく本来の目的を思い出したように芽以を向いた。

「貴方が、『芽以』ね」

 ふうん、と値踏みするように見てくる日向子に向かい、逸人が言う。

「おい。
 芽以は、お前より年上だからな」

「知ってるわ。
 圭太の同級生なんでしょ?」

 まあ、そう聞いてなきゃわからなかったけど、と付け加えてきた。

 ……どういう意味だろうな。
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