パクチーの王様
「あんたが本気で圭太を好きなら、きっと、圭太は家を捨てて、あんたのところに行っていた。

 あんたの気持ちが圭太を向いてないから、圭太はそこまで押してはいかなかったのよ。

 ……捨ててやりたいわ、私も圭太を。

 でも、好きなのよ」

 こちらを見ずに、真摯にそう言う日向子を見上げ、芽以は思っていた。

 可愛い人だな、と。

 こちらを見下ろし、ふっと笑った日向子は、
「帰るわ」
と言う。

 日向子は代金を払おうとしたが、逸人は断った。

「じゃあ、今度、お祝い持ってくるわ」
と言い、日向子はスマートに引き下がる。

 そして、こちらを振り返ると、
「でもまあ、此処に来て、収穫はあったわ。
 貴女が今でも圭太を好きなわけじゃないとわかっただけで」
と言ってくる。

 いや、私にも私の気持ちがわからないのに、どうして、貴女にわかるのですか?

 そう思いながらも、芽以は、特には突っ込まずに日向子を見送った。
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