パクチーの王様





 店が閉まる前、会計していた常連のおじさんが逸人の方を見、
「今日はいつも以上に、パクチーの香りがよく効いてたよ」
と褒めてくれた。

「ありがとうございます」
と言いながら、

 自分を痛めつけたかったので、ついパクチーの分量が増えてしまったのだだろうか、と思っていた。

 片付けを終え、彬光《あきみつ》が帰った頃、芽以が自分の許にものすごい勢いでやってくる。

 なにを言われるかと厨房でビクついたが、芽以は頭を下げて言ってきた。

「あのっ、ありがとうございますっ」

 ありがとうございます?
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