君が夢から覚めるまで
15.最終電車
「最低っ‼︎」
目の前にいた女は亮の顔を平手打ちし、泣きながら部屋を出て行った。
なぜ…弟の彼女にこんな事してしまったのだろう…。
酔っていた…訳ではない。
ただ、無性に腹立たしかった。
この柔らかい唇も、透き通るような白い肌も、可愛らしい笑顔も、囁くような甘い声も…全て怜のモノになった事が許せなかった。
「俺のモノだったのに…」
あの日も香帆は泣いていた。
なぜ別れてしまったのか、自分でもよく分からなかった。
香帆が好きで、好きで、好き過ぎて…なのにあの時、隣で寝ていた香帆が寝言で自分ではない他の男の名前を呟いた。
多分、東京へ出てくる事のきっかけとなった昔の男だろう…。
もう忘れていると思った。
だけど、夢に出て来るほどまだ好きでいる事を改めて知った。
だから許せなかった。
嫉妬で気が狂いそうだった…。
壊してしまいそうだった…。
だから別れたのだ…。
なのに、結局またこんな形で香帆に手を出してしまった。
「なんでよりによって怜なんだよ…知らない奴だったら、こんな気持ちにならねぇのに…」
昔から怜は女によくモテた。
取っ替え引っ替え女も変わっていった。
女は自分の欲を満たす道具としか思ってない。
それで泣いてる女を見たのも一人や二人じゃない。
そんな奴の今度の彼女が香帆だ。
なぜ香帆なのか?
香帆が…怜の道具にされるのも時間の問題だ。
自分の事を棚に上げていう事じゃないが、兄弟して香帆を傷付けるのは許さない…。
「ごめん…」
香帆が締めたドアに一人謝った。
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