【短編】夜の魔法が解ける、その前に
飲み会でも帰る様な時間に神社の境内に集まった。
「揃った?」
キリッとした、長い黒髪をきっちり一つに束ねた、
いかにもって感じの宮崎さんという巫女さんが
ホワイトボードの前で支持を出す。
「山本さん、中村さん、藤野さんの配属はここね」
そう言って貼ってある境内の地図を指差す。
「で、佐藤さん、あなたはここね」
私だけ1人配属が別になった。
受付に配属された私は1人ポツンと置いてある
パイプ椅子に座った。
目の前には舞台があって
和太鼓が並べられている。
神社の外からは屋台の呼び込みの声が聞こえる。
「あの、私今日が初めてなんですけど!」
そう言ったのに、なぜか1人。
他の子たちは皆おみくじとか、お守りを売るための仮設テントに立ってるのに。
さっき一緒に話を聞いていたバイトの子たちは
楽しそうにお喋りしてる。
いいな、楽しそうだな。
想像してたのと違うよ。。。
お守り売ったりおみくじ渡したりするんだとばっかり思ってたのに。
私もあれ、やりたいなぁ。。
そんな私を叱るように急に冷たい風が吹いて、体がブルルっと震える。
ああ、寒い!
火のついていないストーブを睨む。
いくら中に着込んでるからと言って、
コートを着るような季節に、外で袴だけだなんて。
ストーブがあるって聞いてたから油断してたよ。