【短編】夜の魔法が解ける、その前に
「なぁ、」
鈴木の冷静さにバイト中ってことを思い出して、
周りの状況を見わたすと、和太鼓の後ろに人が
ゾロゾロ並んで準備を始めていた。
もう一度腕時計を確認した時、
門の前にいる大勢の人が
新しい年へのカウントダウンを始めた。
「じゅう!」
「きゅう!」
「はち!」
「なな!」
その声にハッとした。
本当に本当に今年が終わっちゃうんだ。
カウントダウンをする人の声が遠のいて、
12ヶ月前、合格祈願の絵馬に書いた言葉に込めた
密かな思いが頭によぎる。