お見合い婚 俺様外科医に嫁ぐことになりました

そうして白い息を吐き出しながら千花が歩いていると、どこからかタタタッという駆け足のような足音が聞こえてきた。

(こんなに暗くて寒い中、ジョギングでもしてるのかな)

心の中でご苦労様と呟いたときだった。不意に手首を掴まれ、千花の心臓が止まりそうになる。


「キャッ……!」


短く悲鳴を上げたときには、何者かに抱き込まれていた。

(――ち、痴漢!?)


「だ、誰か――」


声を振り絞って助けを呼ぼうとした瞬間、「千花」という聞き覚えのある低い声が耳に届いた。修矢だったのだ。

(どうして修矢さんがここに!?)

驚くと同時に身体を反転させられ、千花が修矢と向かい合う。その顔はどこか苦しそうで、千花の胸が締めつけられた。


「予想したとおりだ」
「……なにがですか?」

< 246 / 271 >

この作品をシェア

pagetop