年下御曹司の、甘い提案が聞きたくて。
新しいビジネスと固い決意
午後七時、私と彼は、とあるオフィスビルの社長室にいた。

並んで座っている私達の前には黒くて大きなテーブルが置かれ、その向こう側には、一人の男性とその娘さんとがいて、私達二人のことを冷ややかな眼差しで見つめていた__。


「今回のお見合いの件は、無かったことにして下さい」


輝はハッキリとそう願うと頭を深く項垂れる。隣にいる私はそれに合わせて慌てて頭を下げ、この先どうすればいいの?と思案した。


顔を上げると私の方に振り返る輝。
そっと手を握り締めてきて、その指先の感触にビクッと肩を震わせ、一体どうするつもり?と窺った。


「俺は、この女性ともう三年以上も前からお付き合い続けています。まだ正式には婚約も何もしていませんが、これから先も俺には彼女しかいないと思っています。
他の誰とも一緒に居たいとは思わない。彼女さえいれば、他には何も要らないとさえ決めています」


堂々とそう言う相手に振り向きポカンとした。
私にはハッキリとプロポーズもしないうちから、輝は見合いの相手に断りを言ったんだ。


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