年下御曹司の、甘い提案が聞きたくて。
拭えない孤独と満たされていく幸せ
その日の午後八時、私達は輝の家に到着した。
洋館風な建物のドアの前でベルを鳴らしてもお母さんは出てこず、呆れたように輝が呟く。


「やっぱり…」


どうせあいつに呼び出されたんだろう…と推測し、折角来たんだし、取り敢えずは中へ入ろうかと鍵を差し込む。

ドアを押し開くと、どうぞ…と私を招き入れ、自分も靴を脱いで玄関を上がった。


玄関先の収納棚には、大きなバラの花が飾ってあった。
それは、あいつが定期的に送ってくるものだと苦々しそうに呟いた輝は、そんな物しか送ってこない野郎なんだ…と続ける。


「でも、綺麗にされてるよ」


バラを長く保つのは案外と難しいと母に教えられたことがある。
水揚げが悪いと直ぐに萎れてしまうし、蕾が付いていても咲かないことも多いんだと言っていた。


「ああ、母さんは華道の免許も持ってるからな」


彼は来る道すがら私にお母さんのことを教えてくれた。
それによると、彼のお母さんは老舗旅館のお嬢様として生まれ育ち、若い頃は女将修行もさせられていた…と言っていた。


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