年下御曹司の、甘い提案が聞きたくて。
そう言いながら腕の中で深呼吸した。
こうして二人だけでいれる時間に、余計なことを考えたくない。


「変なやつだな」


年上の私を「やつ」と呼んで年下の様に扱う輝。
それを気恥ずかしく思いながらキスを繰り返して、そのうちまた二人でベッドの中へと潜り込んだ。


指先で弄ばれながら、頭のどこかでは輝の正体を知りたい…と思う。

今朝の彼女が言っていたように輝が都築商事の御曹司なら、どうして彼はその会社を辞めて、北芝電気に転職してきたんだろう。


(それに社名とは名前が違うのも不思議。よくあることなのかもしれないけど、海外支社に配属されていたのも、実は御曹司として期待されていたってことじゃないの?)


忘れていたけれど、輝の前職が『都築商事』だった。
私はそれを思い出して、だから何処かで聞いたことのある社名だったんだ…と気がついた。


輝は入社当初から英語力を買われ、海外支社に勤務していたと話していた。

だけど、それは御曹司だからこその儀礼的な配属で、仕事先の関係者達に彼の顔を覚えさせる為の手段だったのではないか。

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