年下御曹司の、甘い提案が聞きたくて。
出せない勇気と迫られる決断
「えっ…滞在延期?」


夜になって掛かってきた輝からの電話に私は愕然とした。
もしかして、またお父さんの企み?と疑ったが、輝の答えは違っていた。


「そうなんだ。他のメーカーにも回るように…と上から指示が出てね」


輝はさっきホテルの部屋に着いたみたいで、シュッと首からネクタイを外す音が聞こえ、私はその音に耳をそば立てながら、そう…と気落ちした声を返した。


「昼間は急に出発したし、望美が心配してるんじゃないかと思って連絡を入れたんだけど」

「ああ……うん…してた」


仕事も勿論そうだけど、いろんな意味で、二人のこれからを気にしていた。


「多分、明後日くらいまで居ればメーカーは全部回りきれると見込んでるんだけど、まだ何とも言えない状況なんだ」


弱ったような言い方をする輝。
それについては私も答えようがなくて、半ば仕様がないよね…と諦めた。


「望美」


名前を呼ぶと彼は少し勿体ぶり、仕事を終えて日本に帰ったら、私とゆっくり話す時間を持ちたい…と言い出した。


< 85 / 194 >

この作品をシェア

pagetop