年下御曹司の、甘い提案が聞きたくて。
気分は沈んでくるが『話さない』という選択肢はもうない。

今井さんにアドバイスされたからというだけではなく、今夜は全てを彼に話して理解して貰い、そして、今後のことにも決着を付ける…という思いで、あの待ち合わせの場所へ向かった。


答えはまだハッキリとは出せなかったけれど、私が輝を好きだって気持ちには変わりない。



(だから、輝にも私を好きでいてもらいたい……)


例えば親が借金を抱えていても。
家を売りに出しても賄えきれない金額を、ずっと返済し続けているとしても。

どうか引かないでいて欲しい。
俺が側にいるから大丈夫だと言って、笑って済ませて欲しい__。


(ついでに輝からの甘いプロポーズを期待しては駄目?)


都合のいいことばかり考えているうちに店に着く。
暖簾をくぐると個室に案内され、思っていたよりも格式の高いお店だったんだと知り、本当に此処でいいの?と問い合わせたくもなったけれど……。


(こういうお店が似合う人だったじゃない)


私は気付いてても知らないフリをしていただけだ。
輝は大きな会社の御曹司で、父親からも跡を受け継いで欲しい…と願われている相手。


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