嘘の続きは
「じゃあ、俺たちあっちで話しながら食事してるから帰りたくなったら声かけろよ」

真島さんと私が無言になったことで生まれた微妙な空気を消すようにタカトが離れたテーブル席を指差した。

差された先に視線を移すと、4人掛けのテーブル席にはすでに青山君が座っていておしぼりもお通しも置かれている。

「果菜、久しぶりなんだからゆっくりしていいぞ。俺も専務と話があるし」

「うん。ありがと。貴くんも話が終わったら声をかけてね」

笑顔で見つめあう二人。
タカトの長い指の大きな手が果菜ちゃんの前髪を梳くようにしてから頭を優しく撫でている。
果菜ちゃんは嬉しそうに目を細めた。

そんなラブラブな二人の様子をまるで映画を見るかのようにまじまじと見つめてしまった。

いや、なにこれ。
ただの普通の夫婦の会話なのに本当に映画のワンシーンみたいなんですけど。

ここ普通の料理屋で映画のセットじゃないはず。
思わず周囲を見回してしまった。もしかしてカメラとかないよね?

それほど二人は纏う空気が違っていた。
うーん、さすがは王と月の姫さま。

この二人で実写映画製作したらヒットすると思う。

「タカト、行くよ」
真島さんの声に「ああ」と名残惜し気に果菜ちゃんの頭をポンポンとするとタカトは真島さんと共に青山君のいるテーブル席に向かって歩いて行った。

2人の背中に心の中で大きなため息をついた。
ああ、真島さんとのやり取り、疲れた。
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