嘘の続きは

姉と義兄



「で、朋花のそれは意趣返しのつもりなの?」

久しぶりに会った姉が困ったように笑っている。

真島さんは昨日から仕事でシンガポールに行っている。

彼の留守を見計らって誘われたのかどうかはわからないけれど、私は姉に誘われてハネムーンから帰ってきた姉夫婦のマンションにお邪魔しているのだ。

「まあそんなところかな」

私も同じように笑って赤ワインをごくりと飲み込んだ。

「朋花の気持ちもわからないでもないけど、ずっと好きだった男と結婚できたんだからやりすぎないようにしなさいね」

姉の真紀はそう言うと、革張りの高級ソファーの背もたれにドンっと背中を押し付けて天井を見上げふうっと息をついた。

「それにしてもあの真島さんが私の”義弟”だなんて笑っちゃうわ」

天井を見つめる真紀の表情はよくわからない。

私には少しだけ彼女に対して不安があった。

今までに何度か真紀と真島さんが恋仲ではないかと噂になったことがあったのだ。
実のところ、真紀は真島さんのことをどう思っていたんだろうか。

最後にその噂を聞いたのがちょうど私が真島さんにフラれた時期だった。
真島さんが私を拒否した理由は真島さんが私の姉である真紀のことを好きだったからなのかもしれないと思って余計に胸が痛んだという記憶がある。

それと、私にはもうひとつ気になっていることがある。

真島さんが私と結婚したのは自分の会社の所属女優の真紀と彼が姻戚関係を結びたかったからじゃないのかという考えが浮かんだからだ。

真紀が真島さんの事務所と契約が切れた時、契約を更新しないで夫の西隼人の事務所に移籍する可能性は否定できない。
実際、週刊紙などではそんな記事も出た。
でも、妹の夫の事務所であれば移籍せず残留の可能性もあるというわけだ。

私には真紀と真島さんの関係がよくわからない。姉と自分の好きな男というだけに目が曇り、冷静に判断できる頭と目を持っていないのだ。

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