嘘の続きは
「今回の旅行がこんなことになったのは半分は真紀のせいだ。それはちょっと反省しろよ。だけど、俺と朋花のことは真紀のせいじゃないから真紀が気にする必要はない」

「でも」

「いいから。それにーーーもうお前この件について出しゃばって来るな。話が余計にややこしくなるし、俺が余分に忙しくなるだろ」

えーっと不満顔をする真紀からそのダンナに視線を向けた。

「西くん、コイツが余分なことしないように見張ってくれ、頼む。これ以上引っ掻き回されたら捕まえるどころか遠くに逃げられそうだ」

「その言い方、なんか棘だらけだわ」

「まあまあ。真島さんもああ言ってるし、真紀はこれから結婚式とハネムーンの準備で忙しいんだから妹さんの件は少し我慢して」

目を細めて俺を睨む真紀にダンナは彼女の手をポンポンと宥めるように触れ、優しく声をかける。

これが映画やドラマの中でならもっと濃厚な色気のある宥め方をするのだろうが、イケメン俳優西隼人の真の姿は良い意味でごく普通の男だ。

もっとも、日常生活でスクリーンの中のような甘い言葉をかけるような男だったら真紀が惚れることはなかっただろう。

芝居でも日常でもそんな言葉を聞きなれている真紀はその男の甘い言葉などすべてが嘘くさいと思う女だから。

日常生活でダンナから真紀がかけられる言葉は全てがシンプルで嘘がないらしい。
< 96 / 163 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop