嘘の続きは
新章

動き出す運命

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メイクよし、ヘアスタイルよし、服装よし。うん、完璧。

「秋野さん、何だか今日は朝からにやけてませんか?」

「あ、わかるぅ?今日デートなのよね、デート」

久しぶりに私はご機嫌だった。

北海道から戻って2ヶ月。
地方のテレビに少し出ただけでネット世界に出回ってしまった私の情報。
おかげで会社にまで野次馬らしき人が来るようになって私は一時的に内勤|になってしまっていたのだけど、やっとそれも落ち着き今週からまた受付に戻ることができたし、今夜はデートの予定が入っているのだ。

「えええー、やっぱり秋野さんって男いたんすか。試食会の時の、|あの?」

どうやら東くんの頭には真島さんのことが浮かんでいるらしい。

あの時いきなり真島さんに連れ出されて戻らなかった私と真島さんの関係を東くんが誤解していることはわかっているけれど、何回否定しても受け入れてくれないので説得はもう諦めたのだ。

「もちろん違うわよ」

「じゃあもしかして芸能人とか」

「うーん、芸能人…ではないわね。でもかなり有名人かもー」

「うわっ、まじか。それってIT社長とかですか、政治家ですか」

「どーかしら」

うふふっとご機嫌な私に東くんが更に絡んできたからわざとぼかして答えた。

「秋野さん、まさか、ここにきて本命っすか?」

ふっふっふ
イエスかノーかは言わず私史上最高の笑顔を見せてやり、鼻歌まじりにラウンジを後にした。

機嫌がいいって?そりゃあいいでしょ。
なんてたって今夜はデートなんだから。

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