秘密の出産が発覚したら、クールな御曹司に赤ちゃんごと愛されています

 約束の時間は二時。

 私の休憩時間に、近くのカフェで落ち合うことにした。
 本来なら入居者の人とこんなふうに会うなんて禁止されているけれど、今回はやむを負えない。

子どもがいるので夜に外出などできないし、休日は樹里がいる。昼間の隙間時間ぐらいしか自由な時間がない。

 私がカフェに到着すると、すでに直樹は窓際の席に座って待っていた。彼の前には一口もつけられていない湯気のたたないコーヒーが置かれている。

 待たせたのかも、と急いで駆け寄る。

「……お待たせしました」
「おう」

 直樹の向かいに座ると、店員さんが私に気がつき、オーダーを聞きにきてくれた。

 とりあえず彼と同じものを頼むと、店員さんはとびきりの笑顔を振りまいて、私たちのもとから離れた。

 ああ、気まずい。

 店員さんがいなくなってから、しばらく沈黙が続いていた。

 さっきからずっと憂いのある表情で窓の外を見ている直樹に、何と話しかけていいのか悩んでいる。

 どう切り出せばいいのか……。

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