秘密の出産が発覚したら、クールな御曹司に赤ちゃんごと愛されています
樹里に対しての態度も、とても誠実で信頼できる。彼が父親なのだと打ち明けて、三人で家族になれたらベストなのだけど。

「松岡さん、おはよう」
「あ、天野さま! おはようございます」

 ぼんやりとしているうちに、カウンターの前に天野さんがやってきていたようだ。いつも金色の髪をしていたのだけど、髪色を変えたようで漆黒になっている。

「驚いた? 色を変えたんだ」
「そうなのですね。よくお似合いだと思います」
「松岡さんは、黒髪のほうが好きだろうなと思って」
「え……?」

 意味深な発言をされて、不思議に思う。一体どういう意味なのだろう?
 ふふっと悪戯に笑う天野さんは、カウンターギリギリまで体を寄せてきた。

「松岡さんの理想の男になってみせるよ」
「天野さま……?」
「あの男に負けないようにね。あ、そうだ。樹里ちゃんって言うんだね、娘さん」

 笑顔でそんなことを言われて、私の背筋にゾクリと悪寒が走った。娘の話をしたことはなかったのに、どうして名前を知っているのだろう。
< 165 / 232 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop