秘密の出産が発覚したら、クールな御曹司に赤ちゃんごと愛されています
「もし何かあったら、俺にすぐに言うんだぞ」
「うん、ありがとう。私たちのこと見られちゃったから……私、会社に言われたら解雇になっちゃうかも……」

 今まで真剣に取り組んできた仕事をこんな形で辞めなければならないなんて、とても悲しい。規則違反をしたのは私だし、非があるものこちらだ。

 それでもいいから直樹と一緒にいたいと優先したのだから、仕方ないのだけど……。

「入居者である前に、俺は樹里の父親だし、友里と結婚を前提に付き合っている。家族だろ。それなのに一緒にいられないほうがおかしいだろ」
「うん」
「もし何かあっても、俺が何とかするから。それに仕事がなくなってもいいじゃん。俺に永久就職してくれれば」

 さらっと何を言うのかと驚いた。落ち込む私を励まそうとそう言ってくれたのだろう。直樹はいたずらな笑みを浮かべて、私を一瞥した。

「もう、からかわないでよ」
「からかってないよ。本気」
「それはそれで……」

 返答に困るよ。うんって言ってしまいそうなほど、舞い上がってしまう。

 そうこうしているうちに、エレベーターが最上階へ到着した。扉が開くとすぐに樹里が家の扉の前まで駆けだした。

「さ、気を取り直して、引っ越しそば食べよう」
「うん」

 樹里を追いかけて、私たちも走り出す。
 胸の中に生まれた小さな不安。だけど直樹といるとそんなことを忘れて幸せな気持ちで満たされる。

 このまま何も起きませんように。
 そう願うしか、今はできない。
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