秘密の出産が発覚したら、クールな御曹司に赤ちゃんごと愛されています

「嘘……。気付いていなかったの?」
「気付くも何も……。そんなこと考えたこともないよ」

「どうして? 俺、態度に出していたつもりだったんだけど……」

 そう言われても!
 まさか小野寺くんが私のことを気に入っているなんて思う訳ないじゃない。
それに、気に入っているっていうのも、どういう種類の「気に入っている」なのかわからない。

警戒心丸出しの表情を読み取ったのか、小野寺くんは私の返事を待たずに話を続ける。
前のめりになってくるので、私はその気迫に押されて少し後ずさる。

「とにかく! 俺のことをもっと知ってほしい。俺も椎名さんのことをもっと知りたい。だから……俺と一緒に過ごす時間を作ってください」

 深く頭を下げてくる小野寺くんに驚いて、慌てて「頭を上げて!」と彼の肩に手を添える。

すると私の手は彼の手に握られてしまった。

「お願い、椎名さん」
「う……」

 その顔――

 高校時代に勉強を教えてほしいとお願いされたときと同じ表情。真剣な眼差しに、少し甘えるようなその顔はとても蠱惑的だ。その顔をされると拒めなくなる。
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