秘密の出産が発覚したら、クールな御曹司に赤ちゃんごと愛されています
 樹里の好きなキャラクターが書かれた赤い歯磨きを渡すと、ぱくっと口の中に入れる。そしてシャカシャカと音をたてて歯磨きをしはじめた。

 娘の樹里は、くりんとした二重の目に、可愛い鼻、大きすぎない口はきゅっと締まっている。

 自分の子どもだから可愛いと感じるのは当然なんだろうけど、それにしても樹里は整った顔をしていると思う。

――父親そっくりの。


「テレビ、みてもいい?」
「いいよ」

 教育テレビで子ども用の番組を見てくれている間に、朝食をテーブルに並べる。
そして保育園の準備を整え、今日樹里が着ていく服を出していく。

「ごはんたべる!」
「その前に着替えてくれる?」
「えー」

 頬を膨らませてみせる樹里は、まだ着替えたくないと不貞腐れる。
でもパジャマのままご飯を食べるのはよくないし、何とか気を逸らして服を着替えさせる。この時点で予定時刻を五分オーバーしていることに気が付く。

ヤバい、時間がない。急がなきゃ。

「さ、どうぞ。召し上がれ」
「いただきまーす」

時計を見ながら、慌てて自分の支度にとりかかった。
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