秘密の出産が発覚したら、クールな御曹司に赤ちゃんごと愛されています

「そう言ってもらえて嬉しいです」
「……でもね」

 でも、という逆説の言葉を聞いて、ホッとしていた心が一瞬で曇る。

「直樹は、ゆくゆくはうちの小野寺グループを継ぐ人なのね。結婚なども大事になってくるわ。どういう人と結婚するかがとても重要なの」

 お母さんは、心配そうな表情を浮かべて私をまっすぐ見つめている。
次の言葉を待つ間、ドクドクと心臓の音が響くくらい不安が押し寄せてきて、息苦しさを感じた。
その先を聞くのが怖い。

「……申し訳ないけれど、友里さんとは結婚してもらえないかもしれない。祖母はこういうことに、とてもうるさい人で……。きっとあなたのことを傷つけてでも別れさせようとすると思う」

 祖母ーーというのは直樹の父方の祖母で、小野寺グループを守ってきた会長の妻ということだ。
小野寺家に相応しい女性でないと、結婚を許さないという厳しい人。

 もともと直樹の父親も、想いの人がいた。しかしその娘の家が一般家庭より貧しい環境だったらしく、祖母は大反対。
小野寺家に相応しくないと言い、ふたりの仲を引き裂いた。
< 50 / 232 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop