秘密の出産が発覚したら、クールな御曹司に赤ちゃんごと愛されています

「ふう……」

 息を吐いたのと同時に、最上階フロアに到着したことを知らせるベルが鳴る。エレベーターの扉がゆっくりと開き、静かに音をたてないようにキャスターを転がし始めた。

「……よし」

 震える指で、インターホンを押すと、しばらくして開錠されると扉が開いた。

そこにはお風呂上りの濡れた髪をした直樹がルームウェアに身を包み、リラックスしたような格好で現れた。

 こんな姿、初めて見た……かも。

 昔付き合っていたころは、お互いに実家だったし、こういう姿を見る機会はなかった。

先程のスーツ姿は大人の男性の雰囲気が漂っていたけれど、今は髪のセットがなくなって少しあどけなくなった。
だけど子どもっぽいわけじゃなくて……誰にでも見せるわけではないプライベートな彼の姿にドキドキしている。


「あの……、クリーニングを取りにまいりました」
「サンキュ。ここに入れたらいいの?」
「……はい」

 ボックスの蓋を開けて、ここに入れてください、と説明する。妙に早口で、俯いてばかりで明らかに挙動不審だと思う。

だめだ、緊張してる。直樹を目の前にすると調子が狂ってしまう。


 
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