隣人はクールな同期でした。
第8章:想う方向性。
日も短くなり
過ごしやすい季節へと変わる中
アタシは残業続きで忙しい毎日を送っていた。


「やーっと残業から解放される~」


腕時計は21時を指し示し
決して早い時間ではないけれど
明日は土曜日で休みだし
いつもの居酒屋で飲んで帰ろうかなって
ふら~っと店に立ち寄り
いつものカウンタに座ろうとした。

だけどそこには
すでに先約が。


「久しぶりじゃん。
 アンタとココで会うの」


それは
気怠そうに酒を飲む
私服姿の煌月。


「なんだ…お前か」


指で煙草を挟んだままグラスを持った状態で
横目でアタシを見るなり
脱力した返事が返ってきた。


いつもこんな感じだから
元気がないのか通常通りなのか
イマイチわかんないけど。


「“なんだ”って失礼な。
 あ、マスター
 アタシはハイボールね」


煌月の隣に座り
ちゃっかり酒の注文。


「私服って
 今日は仕事休みだったの?」

「…まぁ」

「ビール以外のを飲んでるのも
 珍しいじゃん」

「…そんな事もねぇだろ」


何を聞いても
反応が薄すぎて
まったく会話になっていかない。


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