時には優しく…微笑みを
全て燃えてしまった。
東京に就職で出てきて1年、やっと落ち着いたと思ってたのに、揃えた物が一瞬にして、燃えた。目の前で。

これが私の地元大阪で言う、漫才なら
『なんでやねん!』
って、ツッコミが入るんだろうけど、今の私にそんな元気もなく…

「櫻井さん、櫻井さん?」

「あ、金田さん…」

「大丈夫だった?私慌てて飛び出したから…」

隣に住んでいた同じ一人暮らしの金田さんが声をかけてくれた。

「とりあえずの物は持ってこれたんだけどね…、櫻井さんは?」

「私、私は今帰ってきてこれ見たんですよね…、だから何も…」

「そ、そっか…、さっきね大家さんがいたから、話聞いたんだけど、保険に入ってるじゃない?ここに入るのに。だから火災保険から補償されるって。ただ、今すぐは無理みたい…私は実家もこっちだからいいけど、櫻井さんて大阪だったよね?どこか行く所あるの?後だお金は戻ってくるみたいな事は言ってたけど…」

「私は、大学は大阪だったから友達とか親戚とかいないんだけど…どうしよう…」

「とりあえず、ビジネスホテルに泊まる?領収書あれば保険で請求出来るって」

「そっか…、探してみるよ。ありがとね、金田さん」

こんな時に声をかけてくれるのはありがたいけど、泊まる場所から探さないといけないなんて、どれだけ私はついてないんだろう。

全焼したマンションを見てボー然となっていた。
< 2 / 195 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop