扉に光るランプ〜落とした想いの物語〜
「スちゃん」



「リスちゃん」



「アリスちゃん!」



「!」



蒼兎くんの声が聞こえ、ばッと目を開ける。



「よかった、目が覚めて」



蒼兎くんの後ろからテーブルにあった食器を片付けながら音仲くんが私に声をかけた。



「あ、あれ?ここ」



元の部屋に戻ってきている。



なんだろう⋯頭が少しぼーっとする。



「最初の頃は不安定だからね。
まあ、慣れたらぼーっとしなくなると思うよ」



「そう」



慣れてないせいで目が覚めるとぼーっとしやすいだけなのか。



「ちょっと待っててね、後片付けするからね。
アリスちゃんはゆっくり休んでて」



「うん」



そういえば蒼兎くんはいつまで私の事を〈アリスちゃん〉と呼ぶのだろう。



名前言ったのに未だにアリスだし。



それとも呼びやすいのかな。



「おまたせ、さてアリスちゃん行こうか」



「あ、うん」



どうやら片付けが終わったようだ。



ソファから立ち上がってテーブルの方に目向けると、ある物を見つけた。



「あ、これ」



「ああ、それ。持って帰ってもいいよ」



「えっ」



それはねずみちゃんから貰った紅茶のフレーバー。



「そのフレーバー貰ってるから、望杏ちゃん家で飲んだらいいよ」



「ああ、そうなんだね。うん、分かった」



音仲くんに言われた通り持って帰る事にした。



それにしても向こうの物をこちらに持って来れるんだ。



そういや、制服だったのがアリスの衣装になって、戻ってくると制服に戻ってたけど、どういう仕組みなんだろう。



「向こうの物こっちに持って来れるんだね」



「ああ、ちゃんとした理由と意思さえあれば持ってこれるよ。まあ、無理な物もあるけど」



「そうなんだ」



やっぱり不思議な世界だな、あそこは。



というか、私が生きていた中で1番驚愕な事だったよ。



それもそのはずだ。



普通ではありえない世界で、漫画やアニメにような世界だったんだから。


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