空をつかむ~あなたがどこまでも愛しくて
14.どこまでも・・・・・・
14.どこまでも・・・・・・

醍が帰って来たのはもう19時前だった。

「ごめん、遅くなって。最終打ち合わせが長引いたんだ」

首に巻き付けた黒のストールをほどきながら、部屋に入ってきた彼は寒い中慌てて帰って来たのたのか頬がピンク色に上気している。

「全然。ずっと寝てたの。お陰ですっかり疲れもとれたわ」

醍は歯を見せて笑うと私の体を抱き寄せた。

「じゃ、今夜も長い夜になりそうだね」

「何言ってるの。明日は大事な製作発表会でしょう?」

「関係ないさ。和桜と抱き合った方が俺は元気になる」

そんな言葉を恥ずかしげもなく私の耳元でささやく彼にドキドキしていた。

「せっかくだからディナーついでに、エッフェル塔からの夜景でも見に行く?」

「こんな時間でも入れるの?」

「ああ、確か今日は23時半まで開いてると思う」

昨日、悠然と私を見下ろしていたエッフェル塔に醍と登れるなんて。

私は笑顔で醍に大きく頷く。

ここに到着して二日目だというのにまだどこにも観光できていない私には嬉しい提案だった。

醍の車でエッフェル塔の近くまで向かうと、夜だというのに、エッフェル塔のエレベーターには長い列が出来ている。

「さすがに夜でも人気スポットだね」

「うん。でも、日中よりはましだと思うよ」

パリの夜は冷たい。

ダウンコートのポケットに手を突っ込んで体を丸めていたら、醍が私の手を取り自分のカシミアのロングコートのポケットに入れた。

「あったかい」

彼の手のぬくもりと冷たい空気から遮断されたコートのポケットの中はとても暖かかった。







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