総長さんが甘やかしてくる③


指定の廃工場に到着した頃には、深夜0時をまわっていた。


派手に響いていたのは、バイクのエンジン音。

眩しいライトであたりが照らされていた。


真夜中なのにまるでお祭り状態。

そんな気味の悪い場所の柱にくくりつけられ、顔面に殴られたようなアザができていたのは――。


「お前……」


血の気が引くどころか頭に血がのぼった。


稔が、人質にされていたから。


俺が、巻き込んだのだと。

そうとしか考えられなかった。


どろりとした気持ちが、ふつふつと、マグマのように腹の底から沸き上がっていった。


「まあまあ。ゆっくりしていけって」


肩に手を置いてきた男の顔面を

――次の瞬間には、肘でつぶしていた。


「ひっ……!」


周りいるヤツら。

目に入ったものから。


いいや、気配を感じたものからといった方が正しい。


とにかく次々と動けないようにした。


「どいつが頭だ」


ザコは要らなかった。

用があるのは、あんな状況を作り出した男にだけ。


そう思い、トップを呼び出した。


「やっぱり強いな。お前」


手をパチパチと叩きながら
俺にゆっくりと歩み寄ってきたのは


「ますます欲しくなった」


『羅刹(ラセツ)』という

悪名高い族の――、総長だった。


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