総長さんが甘やかしてくる③


 ◆


「あの依頼、進めなくていいんですか」

「どの依頼だ」


某探偵事務所には、

今日も小さなことから大きなことまで案件が持ち込まれていた。


中でも、ここ最近

もっとも助手を驚かせた依頼は――  


「失踪した少女が暴走族に救われたなんて。なにがあるかわからないものですね」


あの事件の関係者からの、暴露。


「進めるもなにも。依頼人には頼まれた通り、居場所や関係者などの情報は伝えたんだ。スピードも正確さも十分だったろ」

「さすがは元暴走族。いや、元総長。昔のツテがあったからこそ、その界隈の情報に強いんですよね?」

「なんにせよ。ここから先は、俺の出る幕でもないだろ」

「本当に警察に言わないつもりですか。……真実を」

「もがけばいいさ」

「まったく。センセイは」


少女は、わかっていた。

探偵が無責任にそんなことを言ってはいない、ということ。

出る幕でもないと言いながら見守っていることを。

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