溺愛彼氏

「あと5分だけ一緒にいて」






「もみじくんありがとうございました」


映画デートの帰り、車で家まで送ってもらいお礼を言えば運転席に座るもみじくんは優しく眉尻を下げた。


「泊まっていけばいいのに」

「でも、もみじくん明日早いって言ってたから私がいたら迷惑かなって」

「迷惑なわけないでしょ」

「でも、私が嫌です。もみじくんが大変になるのは」


助手席のシートベルトを外し「じゃまた、連絡しますね」とひと言残して車を降りた。

彼の重荷になるのはいちばん嫌なので、一緒にいたいけれど我慢。
もみじくんは明日大事な取引先との会議が朝早くからあるようで今日は早めに帰宅して、お家にも行かないと決めていた。


「おやすみなさい」


と車の外から中の彼に向かって呟き、玄関の門をくぐった。
扉に鍵を差し込み一歩踏み入ったその時、コートのポケットの中でスマホが震える。











振り返れば、運転席に座ったもみじくんと目があった。玄関の扉を閉めて私は踵を返した。


彼は、狡い。
















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