わたしの愛した知らないあなた 〜You don’t know me,but I know you〜
聖夜

1.

「あーあ」

須賀は空いた皿を置きながら、つい声が漏れた。

今夜は店を貸し切ってクリスマスパティーが開かれていた。パーティーと言っても一人キャンセルも出て、参加者は5人だけだ。

その中には一花もいる。顔をあわせた途端に、この前ごめんね、と謝まられて、たいして別に気にしてもいなかったが気にしてくれていたことは嬉しくて、いい気分になった。

だが、当然なのだが、自分は今日は従業員側なので、そんなに話してばかりもいられない。

……面白くない。

須賀は料理が出てくるのを待ちながら客のいる方に目をやる。

客は5人。一花さん以外に、女性はあと一人、前にも来てくれたことのある人だ。スーツを着ているせいもあって、キリッとした、でも感じのいい美人だ。今日は彼女の主催だった。

男は三人。直接知っているのは四条だけだ。会社帰りらしい彼はスーツのまま窓ぎわの席に静かに座っている。来店した時に預かったトレンチコートはいかにも高級そうだった。でも須賀は、彼ほどそれが似合うと思う男を今のところ他に知らない。

もう一人はロゴの入ったセーターというラフな格好をしていた。椅子に斜めに座りながら明るい声で話している。でも確か、あの服たっかいやつだよな。

次の最後の一人とは面識はなかったが、顔は知っていた。

松岡瞬。レストランを何軒か展開する若手実業家だ。雑誌のインタビュー記事で見たことがある。
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