わたしの愛した知らないあなた 〜You don’t know me,but I know you〜

2.

須賀は一通り話し終えると、思わず息を吐いた。

須賀の前の席には松岡瞬が静かに座っている。

彼は、俺の妄想、を最後まで茶化すことなく聞いてくれた。それは、なんのあてもなく、資金もなく、知識もなく、おまけに今時でもない、世界で食をテーマにビジネスがしたいという、俺の夢だった。

「なるほど。世界か。僕は国内展開しか考えてないからすごいね」

と、松岡は本気とはとても思えない言葉を放つ。

「そう言えば瞬、世界って言えばお前この時期毎年フランスじゃなかったっけ?」

後方の席にいた政治家の息子が口を挟んだ。

「ああ、今年は色々あってやめたんだ」

松岡が振り返って言う。

「なんだ、ついに葡萄畑手放したかと思ったぜ」

「悪いけど、まだ持ってるよ」

え、この人もしかしてフランスにワイナリー持ってるとか?なんだ、そりゃ。色々恵まれすぎじゃね?

松岡は須賀を見ると、「四条と共同出資なんですよ」と言った。

いや、なんにしてもさ。と思いつつ須賀は、そうですかと言っておいた。

「ねえ、瞬。……あの二人さあ、どうなると思う?」

やはり後方のテーブルに座っている吹子が手元のワイングラスを見つめながら言った。

「二人って誰だよ?」

間の抜けた問いを無視して松岡は言った。

「元どおりになるよ」
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