わたしの愛した知らないあなた 〜You don’t know me,but I know you〜
追記:指輪
一花はぼんやりとした意識のまま、なんとなく首元に寒さを感じた。

が、身動きする前に布団をかけられて温かくなる。

でもそれよりも、添えられた手の方がもっと温かかった。そして耳元で低い甘い声が囁かれる。

「おはよう、お嬢様」

「……おはよ…」

目を閉じたまま一花が答えると、そっと目元にキスされる。

ゆっくりと目を開けると白い肌が目に入った。腕枕をされているのを感じる。

守られているように抱かれているのは心地よくて、また目をつぶるとぼそぼそと言った。

「……もう、朝?」

「そうですね。まだ寝ててもいいよ」

「うん……」

榛瑠の広い胸に顔を埋めながら、まだ半分ぼんやりしたまま一花は言った。

彼の滑らかな肌を感じる。髪を撫でられる。一花は目を閉じたまま、榛瑠の匂いだなあ、と、その肌にちょっとキスした。

「誘ってるの?」

「ない……」

小さい声で、でも一花は迷わず答えた。今、こんなに目覚めが悪いのも誰のせいだと……。

「タチが悪いな、……相変わらず」

榛瑠は笑いを含んだ声でそう言うと、一花の顎先に指をあてて上を向かせてキスをした。

「……今、何時?」

「11時近いかな」

榛瑠は腕を外して半分体を起こすと、時計を見て言った。

「夜、じゃないよね?」

「もちろん」

それはそうだ。夜のわけはない。昨日、榛瑠のマンションに来てそのまま一晩すごしたのだから。でも、もうそんな時間?

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