その誕生日はきっと誰かの特別な日。
その後は無言で早歩きになって、エレベーターに乗って席に着くまで口を開かなかった。
甲斐君が近くにいたのかも知らない。


「どうしたの?すごい顔だよ。」

里佳子に言われた。

「不機嫌なんです。」

「痴漢にでもあった?」

「ある意味セクハラです。」

「何何?」

話しをしてあげた。ついでに甲斐君のデリカシーのなさを罵った。

「ああ・・・・・、それは、まあ、許してあげて。必要不可欠の急務だったから。」

「なにが?」

「まあまあ、お詫びにコーヒー奢らせてくる。」

そう言って甲斐君のところに行って、本当に休憩室に引っ張って行った。


それは私の分だけでしょう?
まさか里佳子も便乗してないよね?


まあ、いつもはいい人だし、コーヒー一本じゃ足りないけど心を広くして忘れてあげよう。
つい先日1つ大人になったばかりだし。


しばらくして、本当にコーヒーを持って帰って来た。

「はい、音羽の分。」

「甲斐君に買わせたの?」

「うん。悪かったって言ってた。ごめんって。」

しょうがない、許す。

「飲み終わったら忘れてやる。」

「そう。ねえ、今日の夜は?」

「予定があると思う?」

「一応聞くのが礼儀じゃない?」

「そう。答えが分かってるなら、何でも誘って。すごく飲みたい気分。」

「OK、いいよ。楽しく飲もう!ちょっと遅くなったけど誕生会にしよう、主役だし端数ぐらいは奢ってあげる。」

「ええ~、もう一声。」

「う~ん、参加人数による。」

「二人じゃないの?」

「うん、楽しく飲もう。たくさん飲んでいいから。」

「ホントに飲むよ。」

「はいはい。じゃあ、あとでお店決まったら教えるね。」


里佳子もしっかりコーヒーを持っていた。
やはり便乗奢られ?
なんで?

甲斐君にお礼は言ってもいいけど、もれなく匠もいるだろうから、止めとく。
今日中でいいや。


よし、残業無しでフィニッシュするぞ!待ってろ、誕生会!!
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