その誕生日はきっと誰かの特別な日。
主役は私だけじゃなかったらしい。
杞憂杞憂。賑やかな皆。
そっと滑り込めばバレないバレない。
端っこの席だしね。

そう思ったのに。

「おっ、主役が二人が戻ってきた!」

わざわざ注目を集めてくれた半田先輩。
酔いが結構醒めてますね。
ウーロン茶を手にしてるから、大人しくお酒はやめたらしい。

もう顔が赤いと思う。
ちゃんとあげられない。見ないでください。

「どうも、戻りました。ご心配おかけしました。無事にこうなりました。」

裏切り者が手をあげた。
すぐ隣で、つないだ手を・・・・、そうだ、忘れてた。
なんで気がつかなかったんだ、自分もどうかしてる。

「おめでとう。」

複数の声が響いた、店内に。
後ろからもおめでとうとヒューヒューが聞こえる。

そっちに知り合いはいないはず。
赤の他人様ではないですか?

誕生日のおめでとうだと思いたい。

ただ、調子に乗った裏切り者はくるりと向きを変えて、そっちにも手をあげて応えた。

コイツは馬鹿か?

適当な酔っ払いの陽気な人達に、何でそんなパフォーマンスを。

ずっと俯いてる私の頭を撫でるという念の入れよう。

このお店はこのメンバーで何度も来てる。
顔を覚えるくらいには。

小さなお店だし、店員さんも5人くらいだと思う。
もう来れない・・・・・。

気配だけでも隣の裏切り者がニコニコと笑ってるのが分かる。
つないだ手に力が入った。
もちろん匠の方だ。

手を開いたのに外せない。

指で押し広げて隙間を作ろうとしてるのに・・・・・、ガッチリと逆に力を入れられた。

週末にここにいるみんなの記憶がリセットされることを願う。

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