その誕生日はきっと誰かの特別な日。
誰かのための特別な場所。
「ねえ、これは誰のための物?」

「今日誕生日だと浮かれてたのは俺の周りにはお前しかいないかったけど。」




「何で?」



「だから誕生日だろう?」

そうだけど。

「これ、プレゼント。」

目の前に小さな包みが出された。細長い包み。
それが何か、アクセサリーのブランドのロゴで想像がついた。

「誕生日おめでとう。」

視線はそっちに行ったけど、手に取ることもなく。
出されたまま、オルゴールとは反対のテーブルに置かれたまま。

静かな二人。
目の前のデザートが解けていく。

「アイス溶けるぞ。」

視線をたどられてそう言われた。

「なんでそんなに急に静かになったんだよ。とりあえず食べてから、開けてみてくれたらうれしい。」


さっぱり分からない。


「今日、誰も誘いにのって来てくれなかったんだ。」

アイスをすくいながら、口にする。

「だから、二人なんだ。」

「誰か、他に一緒に祝って欲しい奴がいたのか?」

そりゃあ、たくさんの人に祝われたいに決まってるじゃない。



「そうか。」

そう言ってプレゼントを引き寄せて、細長い包みはバッグに仕舞われた。

「ほんの気まぐれだったから、まあ、いいか。」

笑いながらそう言ってテーブルからプレゼントが消えた。
私のお皿のハッピーバースディは綺麗に残ってる。


「気まぐれに、そんなもの渡されても。相手に失礼だよ。ちゃんと、したほうがいいよ。」

一体誰に買ったのか知らないけど、その人に似合うと思って買ったものを気まぐれにって、渡す?無神経にもほどがある。

アイスは食べ終わった。
私のプレートは匠のより少し贅沢になっている。
小さいけどあと四種類のデザートがある。

バクバクと味わいもせず二口で食べて、紅茶を飲んだ。


ごちそうさまでした。

シルバーをお皿において、まだ綺麗に残ったままのメッセージを見る。
どんどん祝ってくれる人は減るんだろうか?
あと少ししたら自分でもおめでたくないって思うかもしれない。

そんな一日になるんだろうか?

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