二人の距離の縮め方~弁護士は家政婦に恋をする~
こくはく
休日の水族館は、家族連れで大変な賑わいをみせている。
学は、予測不能に動き回る見知らぬ子供達に注意を払いながら、人混みを掻き分け、芽衣の姿を探していた。

こんな予定じゃなかったのに……。

芽衣を見つけられないまま、出口付近まで来てしまった。学は一度薄暗い天井を見上げた後、今度は人の流れに逆らうように、来た方向に戻っていった。

二日前、まわりくどいプレゼント作戦が伝わらず反省した学は、直球勝負でついに芽衣をデートに誘う事に成功した。
彼女の事は、出会ってすぐから意識していた。しかし、学は雇い主の立場を下手に壊したくなかったし、元来女性に関しては積極的になれない質なので、なかなか一歩踏み出せずにいた。

それでも気付けば彼女の来る日はわざと出勤を送らせて、短い会話の時間を楽しむようになり、だんだんと芽衣の方も少なからず好意を抱いてくれているのではないかと感じるようになった。

今日はデートプランを練りに練って挑んだはずだったが、出足から躓いている。
学の予定では、今頃映画館で、評判の恋愛映画をみているはずだった。なのに実際は元気がありあまっていそうな子供達に囲まれながら、人探しだ。

別に水族館が悪い訳ではない。涼しいし綺麗だし、こんなに混んでいなければ大人でも十分楽しめる。

しかし、七月の休日の水族館は、魚より子供の数の方が多いかも知れないと思う程の盛況ぶりで、恋人のように手を繋ぐ事もない二人が、はぐれてしまうのは仕方のない事だった。

「一体誰のせいで……」

学は心の中で毒づいた。そもそも水族館に来る事になったのは、芽衣が昨日仕事で訪れたという、ある家のご婦人のお節介が原因だ。
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