約束の白いバラ
First



夢を見ているんだ、って気づいたのは差し伸べる私の手が小さかったから。そして…

「ねえ、こっち来てよ!」

「なんだよ、漣夏」

今は隣にいるはずのない彼がいたから。
これは、私の望みを叶える夢なのかもしれない。本当は、あなたに今も隣にいて欲しかったのにね、どうして手を離しちゃったのかな。
もう、前みたいに笑い会えないのかな。
ごめんね…ごめんね…

でもね…あなたの名前も、あなたの存在がどんなものだったのかも、『今の私』には思い出せないの。

何もわからないまま何度も夢の中の彼に謝りながら再び黒くて深い眠りの底に落ちていった。





pipipi…

いつも通りの目覚ましで目が覚める。
けれど、いつもと違うことがひとつ。右眼から1粒の涙が零れ落ちたこと。
どうして私は泣いてるの?
理由はわからないけれど、不思議と悲しい気分ではなくて…。涙を拭ってからふあっと欠伸をして、ゆっくりとベッドを降りる。
春先でまだ少し寒さが残っている。
なんだか懐かしい夢を見ていた気がするけど、何か思い出せない。夢の欠片を思い出そうとするけれど…すごく温かくて優しい夢だった気がする。でも目が覚めた時はなんだか冷たかった。
ぼーっとそんなことを考えながら学校へ行く準備をした。

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