世界で一番可哀想な男のお話

ベアトリーチェ

次の日から彼の大掛かりな結婚がはじまった。
一人目ということもあり、立派な挙式が行われた。
ベアトリーチェという名の女性だった。

ただ、結婚するだけでは彼に感情は芽生えなかった。
王はエイブリーに対して怒りを覚えたが一年前、
最後に何か言おうとしていたが、無視して帰ったのは自分だと気付き、
王の怒りは鎮まった。
エイブリーにまた聞きたいものの、
この一年の間にエイブリーは病に侵され亡くなってしまっていたので、
どうする事も出来なかった。
手探りで探すしかない。

一週間ほど経った日に王はキスをすれば彼に感情が芽ばえるということと、
彼とキスをしたあとその相手消えてしまうという事がわかった。
王はとても焦った。
どうにか弁明しようと大臣や国の民にベアトリーチェの話をしようとしたが
どういう訳かどれもベアトリーチェの事など最初から知らないようであった。
王以外の記憶からベアトリーチェが消えていたのだ。
エイブリーが言っていたのはこのことだろう。
だが王はエイブリーの心配とは裏腹に、
気負うことなく、これは好都合だと考えていた。
ニルは喜びを示しはじめた。
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