死席簿〜返事をしなければ即、死亡


名前を呼ばれることなく、死ぬ?


「諸岡みたいに飛び降りてもいい。自分で自分の舌を噛み切ってもいいんじゃないか?」


今井は、完全に楽しんでいる。


事あるごとに歯向った俺を、徹底的に痛めつける気だ。


簡単に名前を呼んで殺すだけでは、物足りないのだろう。


「洋子、このままじゃダメだ」


俺は膝をついて、目線を合わせた。とはいっても、首を振り続ける洋子はなかなか俺を見なかったが。


ちゃんと話さないといけない。


気持ちを伝えてないといけない。


もう2度と、会えなくなる前に__。


「いつも洋子は側に居てくれたよな?俺が遠ざけても遠ざけても、めげずに話しかけてくれた。俺は、照れ臭かったんだと思う」


初めて明かした、自分の気持ち。


こんな時じゃなければ、正直になれなかったかもしれない。


洋子が、ようやく顔を上げる。


「冷たくして悪かった」


「__雷、人?」


「ちゃんと謝らないと後悔するからな。俺は洋子のことが__好きだ」


「えっ__?」


驚いて見開かれた目から、大粒の涙が溢れ、こぼれていく。


俺の気持ちを知ったからこそ、知った上で別れが迫っていることを分かっている、涙が。


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