懲らしめて差し上げますっ!~じゃじゃ馬王女の下克上日記~
長年、この国の平和は保たれており、戦の気配はない。

たとえ戦闘が勃発したとしても、強豪な軍を備えているため王女が剣を振るう事態にはならないのだが、彼はそう言ってからった。


ダークブラウンの短髪の毛先はツンツンと尖っていて、百八十五センチほどの長身に、筋肉質の逞しい体。

藍色の騎士服を身に纏う彼は、その身分に相応しい立派な体格をしている。

けれども、切れ長の黒味がかった瞳には涼やかな色気があり、面立ちは美麗であった。


「どうした、ラナ。防戦一方だな。もっと打ち込んでこい!」と挑発した彼の名は、カイザー・ミハエル・ホブロア。

王女と同じ十九歳で、彼女より二日早く生まれている。

彼の母親はラナスタシアの乳母で、ふたりは乳兄妹という間柄にあり、幼い日の多くの時間を共にして育っていた。

そのため、一介の騎士であるカイザーは、王女をラナと呼び捨て、軽口を叩くのを許されている。

ただし、それはふたりきりの時だけであり、王女以外の者に対して彼は、無口でクールな態度を取るのが常であった。
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