こじれた恋のほどき方~肉食系上司の密かなる献身~
「食欲はありますか? 軽くなにか食べられるんでしたら作りますよ。なんでもおっしゃってください」

「すみません。ありがとうございます。あの、最上さんは……」

「たぶん、最上は仕事で遅くなると思いますので、先に寝ててください」

小宮さんはにこやかに笑って「気にしないでください」と付け加えた。

最上さんは普段何時頃に帰宅して、食事はどうしているのか、帰ってきたら何をしているのか、どうでもいいような質問が浮かんでくる。

なんで最上さんのこと気にしてるんだろ……。

帰ってくるまで待っていようかな。なんてそんなことを思っていたところに先に寝ていてくれと言われ、いったい自分は何を考えているんだろうと我に返る。

明日は会社に行けそうだ。というか、行かなければならない。部署異動までもう一週間もないのだ。しっかり引き継ぎをしておかないと後が困る。

「小宮さんは最上さんの秘書なんですよね? 会社の?」

「私の父が彼の父の専属秘書なんです。最上と出会ったのはまだ小学生になる前だから付き合いでいったらかなり長いですね。そのつながりで昔から彼の世話役兼秘書をしています。あ、ちなみに今朝早くあなたのアパートに最上と一緒に行って荷物を回収してきましたが、まだ足りないものはありますか?」

「人の手を使って」と言っていたけれど、小宮さんと一緒にアパートに行ったんだ。なんだか知らない人に自分の部屋を見られて少し恥ずかしい気もする。
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