ふたりの関係には嘘がある~俺様エリートとの偽装恋愛は溺愛の始まり~

「どうしたの?こっちだよ?」


今日は私が知っているお店に行くことになっている。

場所を知らないのかと声を掛けたのだけど、違うらしい。


「焼き鳥屋に行くのは今度にして、今日は家で飯にしよう。初めて指名もらったお祝いだ」

「まだ契約が成立したわけじゃないよ」


契約は実際に会って、話して、設計図や見積もりを見てもらって、それで納得して初めて、契約成立となる。

まだ指名の連絡が入っただけ。

だからお祝いの必要はなく、当初の予定通り、焼き鳥屋さんへと足を向ける。


「お祝いしてやりたいのに」


不満げな実松くんの気持ちが嬉しくて、甘えるように、思い切って腕を絡めてみた。


「契約成立したらお祝い、よろしく」


…って、あれ?

なにも返事がない。

調子に乗り過ぎてしまったのかもしれない。

柄にもないことをして呆れられたかも。

恐る恐る様子を伺うように見上げると、実松くんは顔を背け、口元に手を当てていた。

< 58 / 110 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop