恋を忘れた君に
4



約束の土曜日。
電話口では具体的な内容迄は決めておらず、昨日連絡がきた。
13時に〇〇駅の改札で。

ななせ以外の人と休日にランチなんて久しぶりだ。
しかも異性。
なんとなく、何時もより、本当にちょっとだけ、お洒落にしてしまった気がする。

時刻は12時45分。
少し早めな気がするけど、待たせるよりは良いか、と改札を出た。
しかし、其処にはもう彼の姿があった。
私に気付くと此方に向かって歩いてくる。

「あれ、夢ちゃん。早いね~。」

と口にする彼。
いや、あなたの方が早いじゃありませんか、と言ってしまいそうになるのをぐっと堪えた。

「お待たせしてしまってすみません・・・。」
「いや、僕が早く来ちゃっただけだからね。」

気にしないで、と笑ってくれる。
何だか彼の笑顔を見ていると、癒しだけではなく、こう、胸の奥が擽られているような、そんな妙な感覚に陥った。

「何か、こう言うのデートみたいですね、なんて・・・。」

はは、と冗談交じりに呟く。
でも彼の反応は、意外なもので、顔を僅かに紅く染め、口元に手を添え、その表情を隠しながら、

「いや・・・その、つもりだったんだけど。」

予想外の反応に、ぽかん、と口を開けながら彼の顔を見てしまう。
いつも余裕ぶっこいてる彼の意外な姿に、些少の満足感を覚えてしまった。

「・・・ほら、もう行くよ。」

むすり、と不機嫌そうな顔をし、背中を向けて歩き出してしまった。


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