恋を忘れた君に


ななせとは毎日、当たり前のように連絡をとっている。
ななせと連絡を取らなかった日なんて存在しないんじゃないかと言うくらい、毎日連絡している。
もう私の日常生活の中に、彼女と連絡を取る、という事は組み込まれているのだ。

今日も眠たい目を擦り出勤。
自分のデスクにつき、RINEを開く。
会社のパソコンにRINEをインストールしてある。
それは別にななせと連絡を取るためではなくて、あくまで、上司との連絡手段。
という事にしておきたい。

RINEを開いた途端に、ななせから連絡がくる。
いつも通りスタンプの連投。
相変わらずだなあ、と緩まみそうになる頬を必死に堪え、返事をしようとすると、最後に一つメッセージが。

>今週金曜日、蒼佑くんと蓮くんとごはん行くけど、夢も来ない?

少し前に遊んだ所なのに本当仲良しなんだから、と呆れながらも

>>行くうううううううううう

そしてスタンプの連投。

そしてまたななせからのスタンプ。

私たちのRINEはいつもこんな感じ。
内容なんてほぼない。

そして金曜日の予定を楽しみに、週末までの残り数日を乗り越えるのであった。




金曜日の17時59分。

この1分がもの凄く長い。
パソコンの右下に表示されている時計を仕事の合間にチラチラチラチラ見る。
もはや仕事よりも其方を見ているような気がする。

カチ。

きた、18時。

バタバタと誰よりも早く片付け、18時5分には事務所を後にした。
いつも帰るのは早いほうだけれど、ここまで早いのは流石に珍しい。

「お先に失礼致します、お疲れ様です。」

「お、お疲れ様です。」

背後から聞こえる戸惑うような声。
そんなものを無視し、待ち合わせ場所へと急ぐ。

会社から待ち合わせの場所までは電車で30分ほど。
約束の時間は19時。
うん、丁度良い時間。

金曜日のアフターシックス。
明日は休み。
今から大好きな友達(とその彼氏と彼氏の友人)とごはん。
我ながら素敵な週末だと浸ってしまう。

「次は――。――。」

車内アナウンスが待ち合わせ場所の最寄り駅を告げた。
時間は18時45分。
待ち合わせ場所は改札を出てすぐのところ。

ピッと改札機に定期を押し当て足早に出た。

もう皆は来ているだろうか?
きょろきょろと周りを見渡していると、見た事のあるキノコ頭。

沢渡さんだ。
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