フルール・マリエ


「またそれ見てるの?」

ソファの前にある指紋一つないガラステーブルの上に飲み物を置いた千紘は小さく笑いながら隣に座った。

「光の当たり方とかドレスの魅せ方とか、綺麗でさ。挙式の時とかにどう見えるのかなって勉強になるんだよね。あと単純に見てて楽しい」

千紘の部屋には個人的に集めているドレスカタログや写真集のようなものが置かれている一角がある。

それ以外はさっぱりとしてモノトーン調の家具が並ぶだけで余計なものが置かれていない。

あちこち触れるには憚れる、モデルルームのような生活感の感じられない部屋の中でくつろげるようになったのはつい最近だ。

千紘の部屋に来ると、たいていドレスのカタログを見ているから千紘も苦笑気味だ。

「休日まで仕事熱心だよね」

「こういうのを集めてる千紘の方が熱心でしょ」

「女性のことを知っておかないと、この業界なかなか難しいからさ。ドレス自体は綺麗だって思うけど、それを着た女性の気持ちって想像しきれてるのか不安だよ」

「私だって、想像でしかないよ。経験者しか実際にはわからないんじゃないの?」

たまにレディースショップを見て回るのも、その一環で、完全無欠の千紘も仕事に対してはそれなりの悩みを抱えている。

そういう一面を見られると、親近感が湧くけれど、千紘はなるべくそれを隠したいらしい。



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