フルール・マリエ
コーヒーが運ばれて来て、ストローで氷をカラカラと混ぜながら小さく息を吐いた。
「そういうことなら、そうと言ってよ。それくらい、協力するのに」
「言ったら、聖は仕事モードになるじゃないか」
「それがいけないこと?」
「デート気分も味わいたかったんだよ。まぁ結局、俺が仕事モードになっちゃったから、あまり味わえなくてもったいないことしたなぁって思ってる」
その言葉の裏を読みたくなってしまう気持ちを抑えて、冷たいコーヒーを喉に通す。
「ここからは、デートってことにしていい?」
内緒話をするかのように身を少し乗り出して、囁くような声で言うので、むせかけて軽い咳が漏れた。
「目的が達成したなら帰るに決まってるでしょ」
「俺、まだ聖を楽しませてないよ。約束は守らないとね」
「そんなのいいから」
「ねぇ、何でそんなに俺のこと避けるわけ?上司部下の関係気にしてるの?」
「気にはするでしょう」
「上司と部下がデートしても何ら問題無いと思うけど?」
「千紘が良くても、私は良くない。何か調子狂う。仕事とプライベートは完全に分けたいの」
「混同しちゃう?仕事中も聖、俺のこと意識してるもんね?」
頬杖をつきながら不敵な笑みを浮かべて、何もかもお見通し、と言われているようだった。