フルール・マリエ


冴羽さんの後押しもあって、新作発表会への参加希望を真田さんに表明した後、数日後には私が参加者になることが決まったと連絡を受けた。

会場の入り口付近は同業者なのか、関係者なのかスーツ姿の男女がパンフレットを手元に談笑しながらすれ違って行く姿が目に入った。

ここで待ち合わせということになっているのだが、ため息が出そうになるのを何度も堪えた。

会場に向かって来る人々の塊の中でもひときわ輝きを放つ存在。

「すみません。待たせましたか」

私の前で立ち止まった真田さんに浴びせられる視線、そしてその後に移る私への視線。

モデルさんと・・・、マネジャーさんかな?

そんな声が聞こえてきそうだ。

「いえ、初めての場所だったので早めに家を出ただけです」

参加者の枠は1名だったが、それはあくまでも従業員の人数で、真田さんは毎回参加しているらしくカウントに入っていなかった。

冴羽さんに訊ねると、その時の支配人と一緒に行ったわよ、と当たり前のように返された。

別に、変に意識することなどない。

これは仕事の一環なんだから、意識することの方が間違っている。



< 87 / 176 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop